インド3日目⑩

わたしはベジレストランに入ったのだが何やら奥のほうで揉めている声がする。

そういえば先程英語の発音についてちょっとした事があった。
マックでソフトクリームを買おうとしたところ店員に聞かれた。
「couple of corn?」
わたしは「見れば分かるだろ。なんで2つなんだよ。」という想いから
「no no,one please」ともう一度告げた。
「no,couple of corn?」
同じ事をいう。
この店員はなぜソフトクリームを2つ買わせようとするんだろう。
1つなんだけどな。
わたしが言葉に窮しているとそこら辺のインド人学生が割って入ってきて教えてくれた。
「cup or corn?」だそうだ。

レストランの奥の方ではさっきから店員同士揉めている声がしてる。

わたしがメニューを見て、適当に選び、オーダーした後のことだ。
給仕が店の奥に入って行く。
暫くすると別の男が奥のキッチンから出てきた。
コックなのだろう。
わたしは暫くその男に睨まれて「あーあ。やっちゃったよ。。」みたいな顔をされていた。

元々ここがベジタリアンの店だと知っていて入った。
給仕してくれたおじさんは異文化に触れる日本人に好意的なのだが、
どうもあのコックはそうでもないようだ。

ここら辺は外国人があまりいない地区で、
いわゆる外国人向けレストランはない。

これからジャイプルに着くまで車内食だけでは心もとない。
何が出てくるかわからない食事に頼れないからだ。
寝台列車に乗る前に能動的にお腹に入れておかないといけない。
そのような理由から、
軽い気持ちで、後学の為にもベジレストランに入ってみたのだ。

わたしは「kaju curry」というものと「mix vegitable soupe」を頼んだ。
給仕が「ナンはいくつだ」と聞くから「1つだ」と伝えると、
彼は安心したようにキッチンに伝えに行った。

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あそこは食事で汚れた手を洗う場所なのだろう。
レストランのホール内にあのように手洗い所があるのは初めて見た。

格式高いレストランにはあるのだろう。
この旅始まって以来そのようなお店には入ってはいなかっただけなのもしれない。

なにやら揉めている声が聞こえたのはそれからすぐだ。
そしてそれが止んで暫くすると食事が目の前に置かれた。

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このスープはおいしそうだ。

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多くのインド料理に豆が入っているのはノンでもベジでも食べれるポピュラーな物だからではないか。
この色を見るとチキンの出汁を使っているのかと思うが、当然使っていなくて、
とろみがあるスープに野菜をペーストして豆腐のように刻んだものが入っている。

わたしはkaju curryを口に運ぶのだが、
その時キッチンの彼がなぜ「やっちゃったよ」顔をしているのかわかった。
辛っ。
わたしはあの揉めていた言葉が何を言っていたのか察することができた。

怒っていたあのキッチンの男。
彼の言葉を予想するとこんなとこだろう。
「外国人?ノンベジ?食えるのかよ!(こんな辛いの)しらねーぞ!?全部食べるんだろうな?
ベジタリアンの店だぞ?!辛いんだぞ?馬鹿にしてるのか!?残さず食えるんだろうな?作っていいんだな?!作るぞ!?」
給仕に念を押していたに違いない。

給仕は「まぁまぁ作ってあげてよ。。異文化に触れてみたいんだろう。」となだめたのかもしれない。

キッチンの男はどんな辛いもの好きの中東人が頼んだのかと、
カレーを煮直している間ホールまで一目見に来る。
どんな奴がチャレンジするのか。
そしてわたしを見て、
「醤油じゃねーか!!(日本人)」

わたしは言葉では何を言っているか分からない給仕とキッチンの一連のやり取りを語気とリアクションと憤慨している彼を見ておよそそのようなとこだろうと推測できた。

わたしは辛いそれを無理矢理ナンと一緒に放りながら後悔した。

ノンベジがベジの店に来ると人によっては宗教を馬鹿にしていると誤解されるのだろうと軽率な行動を反省した。

食事の進み具合を見に来た給仕が「笑。」と笑顔を向けてくれる。
わたしはつい今しがた彼とコックが喧嘩していた事に対して知らないフリをする。
そして「コレ辛いね笑。ここまで頑張って食べたんだけど。。」というジェスチャーをする。

すると給仕のおじさんはわたしのジェスチャーを見て「ちょっと待ってろ」といい、カレーを下げた。
わたしは「あ、味をマイルドにしてくれるのかな。」もしくは「もう食べないみたいだ。。」と下げたのかな?と気遣いに感謝した。

暫くすると私の目の前にカレーが置かれた。

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同じの増やしてきてどうすんだよ!!

食えるか!

伝わらないことはこの店でもう一個あった。

「water」の発音についてなのだが。

この旅始まって以来わたしが何度も現地の人にお伝えしてきた「water please」。
この炎天下が抱きついてくるインドでwaterは欠かせないもので、なくなったら補っていた。
その回数はわたしの発音をも変えさせた。
結局カタカナ読みの「ウォーター」は二度聞きされてしまうので「ウォラーァ」になるのだが、
ただここのレストランでは違ったようだ。

外国人慣れしていなく、
英語が伝わらない給仕にわたしは指をさしてメニューを指定していたのだが、
給仕はどうやら「何か飲むか?」と聞いてきているみたいだ。
わたしはこの旅中磨きに磨いてきた伝家の宝刀、「water please」と告げる。

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わたしの発音が悪かったんだと思う。