「新しいご年配の方」

「新しいご年配の方」

今日中目黒から渋谷までのバスに乗った。

バスの中は混雑していて身体が小さいご年配の方は人と人の間で大変そうにしていた。

自分は近くまで来たご年配の方に席を譲ろうと立ち上がり、
促すと、
「ありがとうございます。次で降りるから大丈夫です。」

とご遠慮された。

バスが進む。

次の停留所でその方とは別の「新しいご年配の方」がバスの中に入って来た。

この時のわたしは
向こうの方でもみくちゃにされている「新しいご年配の方」が早くこちらに流れてこい!と思って注視していた。

ただ、残念な事に1mぐらい先で流れは止まり、
その「新しいご年配の方」はその場で停滞した。

バスはそのまま進む。

次の停留所でさらにまた「新しいご年配の方」が入ってきた。

今日は「新しいご年配の方」日和だ。

しかもよく見るといい感じの「新しいご年配の方」じゃないか。

こんな豊作な年はない。

採れすぎた「新しいご年配の方」 を近所におすそ分けしなくてはいけない。

わたしはといえば、
もう既に片足が立ち上がる準備をしている。
そして立ったらどこを掴もうか。
どちらを向こうか。
左足もボックス席の領域から今や遅しとはみ出ている。
まあ待て、Boy。そう早まるな。

今バスはどこらへんを走っているのだろう。

わたしには関係ない。
池袋でも赤羽でもいい。
どこにでも連れて行ってくれ。

わたしは今「新しいご年配の方」に夢中なのだ。

いよいよこちらに、大根がベルトコンベアーで洗われて、すぽーッンと抜けてくるようにもみくちゃにされた「新しいご年配の方」が、、

苦しかっただろう。
辛かっただろう。
でもここまで来たらもう大丈夫。

あー。はいはい。
立派な大根だ。

わたしはもう待ってはくれない左足を軸に
体を起き上がらせ
立ち上がろうとしたその時、

「次で降りますので大丈夫です笑。ありがとうございます笑」

次で降りる「新しいご年配の方」多くない?

ショックでわたしも次で降りてしまった。

大阪上から渋谷駅まではまだ大分ある