バスはそれまでの退屈な農道に別れを告げ4車線の道路へ。
暫くして適当な所を曲がると市街地に入る。

ここにいる乗客全員がホーチミンが近い事を感じている。
皆表情が緊張している。

いつ停まってもいいように腰をちょっと浮かせているみたいだ。
既に荷物はまとめられていて手元に用意されている。

明るい色彩の看板やベトナム語や英語が視界を埋める。
開けられた窓から入り込む風は市街地でも容赦ない時速を感じさせ
人々の喧騒も運んでくる。
ひょっとしたらもうホーチミンに入っているのかもしれない。

環状線を走っている時にポツポツいたバイクが
市街地に入ると道路を所狭しと埋める。
国民1人につき1台か!と疑うバイクの数だ。

これはすごい。
例えるなら初詣の参拝客だろう。
なかなか前に進まない状態。

あれぐらいの数のバイク(原付)が信号待ちをして、
青になったら動く。
大群は大群を引き連れそこに車間距離が生まれる事はない。

話しには聞いていたがここまでとは思わなかった。

バスの横をどんどんすり抜けてゆく。
バスもいちいち気にしない。
当たりそうになろうがブレーキは踏まない。

この光景は世界のどこに行っても見ることはできないだろう。

こうしてみると自転車は一台も見かけない。
中型、大型バイクも見かけない。
また皆色や模様は違えど大抵同じ型のバイクだ。

日本のそれのように横に太くなくもっと痩せている。
椅子の下にメットインできるように作られていないようで
自転車の様な格好をしている。
運転中ヘルメット着用義務のないベトナムではバイクにそれを収納する必要がなくその分細身になったようだ。

これは後から知ったがこちらでは「バイク」の事を「ホンダ」と言うらしい。
「お前最近ホンダ買ったらしいなぁ。」
「そうだよ。前のホンダはボロかったから新しいホンダを買ったのさ。」
等という会話になるみたい。

この終わらないバイク集団は一体どこに行くのだろう?
ツーリストバスから街並みや道路交通状態を眺めながら
私は他の外国人のようにこの光景に慣れる事はなかった。

この群集。

ひょっとしたら俺たち外人を驚かせようと
同じ奴が何度も何度もぐるぐる回ってるんじゃないだろうな?
現れては通りすぎ、
現れては通りすぎ・・。

だってそうじゃなくちゃ数が合わないでしょ!
こんなにバイク乗りがいる?!

国を挙げて、
なんかベトナム名物作らなきゃいけねーってんで、
国民1人1人にバイクをプレゼントして
「よーしお前ら!外国人がよく現れる道をとにかく通りすぎて、また現れて、朝から晩まで無目的に走れ!」って刷り込まされてるんじゃないだろうな!

私は同じ奴がバイクで物凄いスピードで地球を何周もして私の前に現れていないか確認しなくてはいけない。

バイク乗り一人一人、
顔は確かに似てるけど違う奴のようだ。

皆無表情の無言で停まっては走る。

皆が皆排気ガスを極力吸わないようマスクをして乗車しているのだが
様々な種類のそれで
カラフルな、
目立つ模様や
質感(レザーだったり)、
各々マスクでお洒落を楽しんだり自己主張したりしている。

バスは「ここは一体どこ!」というような雑多な場所で停まり今すぐ出て行く様に促される。

今日の宿探しとかそういうんじゃなくて
うまいご飯を食える所とかでもなくて、

私はここがホーチミンのどこだかを誰でもいい、
先ず聞かなくてはいけない。

どちらに向かえば何があるか分からないくせに
勢いよく歩き出すと

「すみません。」
後ろから呼び止める声がした。
それまでシュリムアップから同行していた日本人の女性2人組だった。

※kenjimoritata@yahoo.co.jp

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