カンボジア3日目②

カンボジアとベトナムの国境は全てバスで越えるのだろうか。
人が歩いていない。

国境の町というよりはサービスエリアのような場所がぽつんと在るだけだ。

人の往来がない事が隣町まで歩いて行ける距離じゃない事がうかがえる。

バスの中からの眺めといえば沼地や湿地帯ばかり。

インフラ整備がされていない一本道を駆け抜けてきた。
周りに何もない平野を見ると「ここが大都市になることはないのかなぁ」と余計なお世話が浮かぶ。

そういえば
先ほどのじゃがいもチキンを食べさせて頂いたのは「スワイリン」という地名らしい。
カンボジア3
日目②
ここが地図上でどこに位置していたのか後で確認してみようと思い聞いてみた。

そして「うわっ。ホーチミンまでこんなにあったんだ。まだまだだったんだ。」等とここがホーチミンだと勘違いした過去の自分をバカにしてやろうと思う。

余りにも退屈なバスでの移動はツーリストから会話を奪った。
昨日の夜から次の日になっても着かないのだから仕方がない。

皆、リュックサックと同じくらい喋らない。

全く誰も喋らない。

喋らないともはやどっちが「荷物」か判別つかない。

次の停留所で足がついたリュックが乗ってきても私は驚かないだろう。

どっちが本当にバスにとって「荷物」だろうという感覚はここまでの旅で時折考えさせられる。

タイのチャンブリ〜アランヤプラテートだったり
カンボジアのシソボン〜シュリムアップだったり
こういうツーリストバスには大抵お前金払ってないだろ!って奴が乗ってくる。
そして段ボールに何か詰めた物を積んで
熱い熱気を身体に纏い
涼しい顔して座ってる。

バスは何の合図もなく停まりそれらを乗せる。

停留所があるの?と思って窓越しから外を見ると何もない。

お前らは重い荷物を運んでいる奴が道端にいると停まるのか!と突っ込みたくなる。

そういった意味で私は
ツーリストバスに「バスが人を運んでいる。」というよりは
「荷物を運ぶついでに人を乗せている。」
印象を持った。

鉄道が走っていないカンボジアでは唯一の輸送手段がツーリストバスで
その輸送費の一端を私たちが担っているのかもしれない。

こっちの窓、向かって左から見る景色と
向こうの席の方、右手側と風景が違う事に気付く。

ある道では左手側に住居があり右手は原っぱ

ある道ではその逆だったりする。

こんな奴がいた。
エレメッカという所でバスに乗車して出発待ちをしていたら
おばさんが外から大量にサングラスを売ってくる。

私が構わず座席の前方を見ているとまだこちらを見ている。

「買わないっ」っていう事で無視しているのに
向こうは「こちらに気付いていないだけだ!」
と勘違いしてる。

まだ見ている。
頭に来たからずっと冷たい目で見てやった。

すると向こうも百戦錬磨。
「このサングラスを買え!」とばかり見てくる。

この2人の様子を他が見たら愛し合ってる2人みたいだろうが、
私たちは決して何かが芽生えた訳ではない。

このサングラスを買え!
いるかボケ!
のカンボジアVS日本の無制限一本勝負をしているのだ。

決して琴線が触れ合って
番号交換した後
別れを惜しんでじっと見つめ合っている訳ではない。

私はこちらをずっと見て離れないサングラス売りに「なんでまばたきもできないんだよ!」と段々頭にきてついには変顔をしてやった。

するとその大量のサングラス売りは急な変顔に腹立ったのか
持っていたサングラスでバスの窓を叩いた。
そして諦めてどこか行った。
「商品で叩いたらダメだろ!」と降りていって説教してやろうか思ったが

確かに変顔はルール違反だったなと反省する。

しばらくしてバスは動きだし勝手に川を渡る。

バスが大きい船に乗り入れて船が川を渡り
向こう岸に着いたらバスが降りる。

勝手に。
こいつらは本当、
勝手に停まって変な奴乗せるし
勝手に停まってまずいチキンスープ飲ませるし
勝手に川にバスごと入る。
全く、
お前ら一々アナウンスしろ!
カンボジア3
日目②

「はい、道端に荷物重そうな人がいるので乗せまーす!」
とか
「はい、私がハマっている美味しいチキンスープがあるレストランに停まりまーす!」
とか
「はい、バスは川に入りまーす!」
とか
一々アナウンスしろ!

やっぱアナウンスいいや!
うるさいから!

しばらくしてバスが停まったと思ったら男が乗り込んできた。

なんだか軽装の痩型が現れたから最初バスジャックかと思ったわ。

何やら前方に座ってる人が男にパスポートを預けている。

『バスジャック犯男』は「パスポート預けたら降りろ」という。

あれ?荷物は持って降りるのかな?

そうではないらしい。
バスも越境するみたいだ。カンボジア3
日目②

そこら辺にある資料館のようなセキュリティの甘い場所でカンボジア側から出国する為審査を受ける

顔も見てはくれずとにかくここに着いたという事で
スタンプラリーのように判子を押してくれる。

みんなパスポートを得体の知れない『バスジャック犯男』に預けたものだから自分のパスポートを貰うまで心配そうだ。

カンボジア3
日目②

入国審査も終えまたバスに戻ると隣のおばあちゃんが美味しそうな物を食べている。
発泡スチロールの入れ物にご飯、その上に照り焼きチキンがのっかっているだけなのだがなんか旨そうだ。
先ほど買ったらしい。

あまりにも美味しそうに発泡スチロール上のご飯と照り焼きチキンを食べるので一応何かあった時の為に
おばあちゃんと写真を撮った。
カンボジア3
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私はようやくベトナムに入国した。

ベトナム側からカンボジア側をパシャリ。

バスは国境からさらに4時間掛けてホーチミンに着く。