掃除が好きだった記憶がある。
一旦、廊下を拭かせたら時間が過ぎても拭いていた。『綺麗ね』と.先生はこれみよがしに誉めたが、先生の足跡が気になって早くどいて欲しかった。
それ以降、僕が拭いた後の廊下は誰もが恐る恐る爪先で通った。
掃除が嫌いだった記憶がある。
終わりがないんじゃないかと思った。
隙間の埃、天井の煤、絨毯の微生物。掃除とは妥協する事だ。
ごみ箱は捨てる為にあるものじゃない。
まとめる為にあるんだと気付いたその日は、ごみ箱を地球の外に向けて蹴って遊んだ。
掃除が嫌いだった記憶がある。
自暴自棄になった時はいつかの彼方に丸投げしてた。
ただそんな日も、いつかの彼方で横になった。
もし誰かが地球を両手で持って上下に振ったら、真っ先に放り出されたのはさっき投げた問題と僕だろう。
掃除が嫌いだった記憶があるし、
掃除が好きだった記憶がある。