オーケーオーケー。センキュー。
ここのホテルも満室らしい。
さっきから明洞(ミョンドン)のメインストリート、忠武路(チョンムロ)を駅の方へ歩きながら今日寝る所を探す。
どうしよっかな。
通りに面しているマンガ喫茶を訪ねる。
韓国のネットカフェは寝る所ではない。
全てオープン席で日本のように「個室」というものはなく、シート席もないから朝まではいられない。
韓国では「一人で」みたいな考えはないようだ。
なのでコンビニ弁当も置いてないし、
料理も一人分の量でないし、
個室という考え方もないのだろう。
駐車場を見つけた。
もう24時を回っている。
思い起こせば今日の早朝、
そのコンビニの従業員はレジから自動ドアまで出てきて、
外を指差して聞いてきた。
「あそこ見える?ほらあそこ。」
「ああ見える見える。」
「あそこに20時集合ね?」
「19時?(ナインティーン)」
「違う違う。(トゥエンティ)」
「わかったわかった。」
「デパート前ね。」
「デパート前。」
「これはわたしの奢り。あなたはお金を大切にしなくてはいけない。」
「センキュー。」
僕は20時に待ち合わせ場所で座っている。
携帯の電池もなくなりそうだ。
あれ?
俺間違えたかな。
指さしてたのここのデパートだよな?
あれ?19時だったのかな。リスニング間違えたかな。英語で「フロント」っていってたけど。
つまりは「外」っていう意味だよね?
「デパートの前」だよな。
まさかデパート内にホテルの「フロント」みたいな所はないよな。
あと1時間待って来なかったらどこか違う場所に行こう。
集合時間から1時間半過ぎている。
「あなたは今どこにいるの?」直訳するとこうなる。
受信した。
集合時間から1時間半も経っているのになぜこの2人はメールのやり取りをしなかったのだろう。
韓流女性は手にお土産を持ってきてくれたみたいだ。
「私は村上春樹が好きなの。」
「『1Q84』読んだ?」
「読んだ読んだ。」
「あと誰好きなの?」
「アオイユウ。」
ここがソウル駅か。
そういえば初めて来た。
ソウル駅は駅前がバスのターミナルになっている。
日本みたいに駅前=繁華街ではなく飲食店もない。
「割り切っている」感じだ。
ナンデムンから歩いていけるんだ。
韓流女性はお食事をご馳走してくれる。
韓国の人は「ホスト」と「ゲスト」という立場がきっちりしているらしい。
「ホスト」はそれが誰であれゲストに対して絶対に奢る。
沢山の料理でもてなす。
『韓定食』に小鉢が多い理由が分かる。
この場合日本人が『韓国に来た』という状態なのでよくしてくれたのだと思う。
なのでしばしば逆に日本に来た韓国の女性は自分たちは奢られて当然と思っているらしい。
僕ももうちょっと日本に来た韓国の方や外国の方によくしないといけない。
韓国の女性は結婚すると髪を短く切ってパーマかけちゃうという。
なるほどだから韓国の主婦はみんなパーマのイメージなのか。
なので未婚か既婚かがすぐ分かるという。
こう喋っていると思うのだが何で韓国の人の英語は発音がいいのだろう。
何か英語の授業が日本と違うのかもしれない。
明洞(ミョンドン)に戻り韓国料理屋で明日の計画と書き物をする。
どうやらあそこの席に座っている2人は日本人みたいだ。
さっき韓国に着いたようだ。
こうやって異国にいると日本人に出会う事がよくある。
こういう状況になった方なら分かると思うが、
お互い日本人だと分かると日本語で周波数を合わせる事がある。
日本語を日本人に聞かせる事によって日本人だという反応を見る。
だから声が大きくなる。
僕はいつも「この作業」って何なんだろうと思う。
頼んだキムチチゲが来た。
韓国の印象。
『危なくない。』
誰も近寄って来ないし騙そうとしない。
金をぼられる事もない。
なんのトラブルもなく物事を進められる。
「誰も近寄って来ない」というのはこれはこれで寂しいものだ。
韓国に「うんこ」を踏みに来た僕はこれがいいのか悪いのか分からない。
こういうある程度成熟している国なら2人で来てもいいのかもしれない。
ただ2人で来たら韓流女性との出逢いもお食事もなかっただろう。
そろそろ24時だ。
24時過ぎると韓国の渋谷から人が誰もいなくなる。
終電がないからかもしれないが
日本の繁華街との違いを見る。
真面目な国、韓国。
ホテルを探そう。
オーケーオーケー。センキュー。
ホテルはどこも満室。
マンガ喫茶は寝れない。
「あんな所に駐車場がある。」
眠くて眠くて立っていられない。
『疲れて座った所が宿』だ。
20代最後の夜、
僕は明洞(ミョンドン)の駐車場で野宿をする。
リュックを腕に巻いて枕にする。
ゴツゴツしていい感じだ。