みなさんの身近に、
過去引っ越してそれ以来会っていない友達はいるでしょうか。
小、中学校の頃、
引っ越してしまった友達。
一人ぐらいはいたのではないでしょうか。
友達が引っ越す当日。
あなたは何をしてましたか。
握手。お別れ会。号泣。キス。(恋人同士ならありえるかも知れませんね)
携帯もPHSもない頃の話です。
森田には中学時代『滝川君』という北海道に転校した友達がいました。
中学一年生で仲良くなったばかりの春、滝川君が引っ越すという事を噂に聞いた森田はどうしたらまた滝川君と会えるかを考えました。
埼玉から北海道じゃ一生会えないと思ったのです。
どうしても一生の別れにしたくない。
滝川君が最後の登校の日。
何をしたかというと、
森田は滝川君の背後に回り込むと髪の毛を一本引っこ抜きました。
DNAをいただいたのです。どこへ行っても将来会えるようにサンプルをいただいたのです。
今思うと完全に気持ち悪いですが、まだ友情、愛情を知らない思春期の頃の歪んだ惜別の形なのかも知れません。
そんな事は知らない滝川君は『イテッ!何するんだよ、』というと、『いいじゃん、いいじゃん』とまだ髪の毛を抜こうとする森田を警戒してました。
森田は森田で『一本じゃ足りない、もっと今日中に髪の毛抜いとかないと、、』とサンプル採取に躍起になりました。
その日、森田は一時間目の休み時間も、二時間休み時間も、給食の時も、昼休みも、掃除の時間も、隙あらば滝川君の背後に回り込んで、どうにか髪の毛を抜こうとしました。
滝川君は『なぜか森田が髪の毛を抜こうとしてくる』とその日は森田に後ろを取られないように必死にしてました。
あまりの警戒心になかなか髪の毛が集まらなくて、どうしたものか。と考えた結果、森田は樋口君
というヤンチャに事情を説明して2人で滝川君を襲う事にしたのです。
困ったのは滝川君です、
なぜか森田と樋口が最後の日に髪の毛をむしってくる。
廊下を走って逃げる滝川君。
追う森田と樋口。
『何でお前ら髪の毛を取るんだよ~』
ついに捕まった滝川君。
滝川君に事情を説明すると、『分かった、ちょっと待ってろ。』
と言うと髪の毛を右手で力一杯引っ張り、プチプチっと自分で引っ込抜いたのです。
滝川君後ろの髪の毛ちょっとなくなってました。
滝川君の手には無数の髪の毛。
森田は『よっしゃー!』と宝の山を見てはしゃぐのでした。
これでも十分引く話ですがこの後、滝川君も協力してくれて、爪とか、その日着ていた白いシャツにサインを入れてもらって貰いました。
そのくらいまた会いたかった訳です。
つめ切りで足の爪を切った滝川君が爪を森田に見せながら『これいる?』と聞いた時も森田は『いるに決まってんだろ!』と意識が低い滝川君にキレたのです。
作業が終了し、
その日貰ったTシャツに採った髪の毛と爪をセロテープで貼ると『これで安心』と思い、涙一つ流さないで、握手もなし、笑顔で滝川君とバイバイするのでした。
そしていつだったか、
タンスから出てきた滝川君の髪の毛と爪とサインがあるサンプリング付きTシャツを母親が見つけると『キャーーっ!』と悲鳴を上げ、100分の1秒で捨てられました。
昨日の話ではないですが、最近あいつ何してんだろうとその時々の友人を想います。