ボール取らしてください

小さい頃よく兄と野球をした。
広場がなかったので壁に向かってボールを投げて壁に沿ってバッターが立っていた。
それは道路をまたぐのでそれでは危ないと言うことで
近くの家の壁に向かってボールを投げて打っていた。

暴投などした場合や後ろにファールした際はその家の庭にボールが入る
その都度「ボール取らしてください」と言っていたが、
また懲りずにやるのでまたボールが入る。
「ボール取らしてください」

子供だからというのがルールでそれに甘えていたというのは大人になって分かるものだ。
僕ら兄弟は
「ボールを取らしてください」といえば野球を続けられると思っていた。
しまいには「ボールを取らしてください」と言いながら人の庭に入っていった。

それが悪いことだと知ると、
今度は「ボール取らしてください」を小声で言いながら(なんで小声で言ったら許されると思ったのか)
忍者のように人の家の庭に侵入した。

ただ子供だったのでそれを侵入とは思っていない。
あの頃のわたしは「ボールを取らせてください」といえば無敵で、スーパーマリオのように音楽が鳴っている間は星を纏っていた

ついには「ボール取らしてください」をいうとバレると思って言わないでボールを取らせてもらった。

僕ら兄弟は怒られると違う新しい壁を探してはその壁に向かってボールを投げた。

ボールは取らせて欲しい。し、あなたの家の壁に向かって投げたい。

そういう気持ちで野球をやっていた。