物に想う

カンちゃんのお兄ちゃんはよく口の中をくちゃくちゃさせていた

森田少年はなんだ?

なんなんだ?と不思議に思った

口の中で長時間

ずーと

クチャクチャクチャクチャ

この世には噛み切れないものがあるらしい

森田少年はそれを『生姜焼き』だと思い、

その日の夕食は『生姜焼き』を母に作ってもらった

でも噛んだらなくなっていく

唾液になっても噛んでいた

森田少年は泣いた

それが『ガム』だと知ったのはずっと後の事だった

この世にはなかなか噛み切れないものと

なかなか飲み込めないものがある。

母親が言う『苦言』もそうだ

生姜焼きの様にはならない

多分それが『  』だと知るのはずっと後のことだろう

多分何十年か先

また

母親の前で泣いた後だろう