タイ3日目⑥

タイ3日目⑥ 「降りろ。ここだぞ。」 チャンブリまで行きたいと乗務員に告げていた為暴力的に起こしてくれた。 「チャンブリ?」 「そうだ。」 バスから降りた所は車庫のような場所。 青いベンチが一画に数多くあって右側には公園のトイレのような簡素な建物がある。 青いベンチの隣には常勤できる人一人分のチケット売り場のようなものが置いてある。 人々がまばらにいる。 乗り合いバスから降りる者は誰もいなく自分一人だけ降ろされた。 「ここが『チャンブリ』?」 「チャンブリ」って街の名前じゃないの? もしかしたらチャンブリという街のバスターミナルかもしれないしチャンブリというバス停かもしれない。 原宿に行きたい僕は今「神宮前」で降ろされて「え?神宮前?ここは原宿じゃないの?」と騒いでいるだけなのかもしれない。 22時38分。 チケット売り場にいる私服で働いている男の子に 「アランヤプラテートまで行きたいんだけど?」と聞くと誰かを呼びに走っていった。 その友達みたいな子が「今から?」と驚いている。 周りに人が集まってきて「なんだ。なんだ。」で共有しだした。 「アランヤプラテート?明日の朝バスが来るよ。」 「ここに?」 「ここ。」 「バリュー(アランヤプラテートまでの途中にある街)行きのバスは?」 「バス停はあるけどここから距離があるし今日はもう終わったよ。」 「私は明日ここにこなければならない?」 「そうだね。朝6時くらいだ。」 タイ3日目⑥ チャンブリバスターミナル付近はまったく何もない。 ホテルもコンビニもない。 人々に忘れさられたような場所。 向こうの方で野良犬が野良犬を追いかけている。 周りにいたタイ人が 「この日本人どうするんだろう。あてでもあるのかな。」という同情の目をしているのを感じる。 僕はただ苦笑いをして、 青いベンチにリュックを置き、 とりあえず持っていた硬水を口に入れて、 時間を掛けて途方に暮れた。 野宿決定。 野宿になる日本人がいよーがいまいが関係なくバスターミナルは営業を終了する。 従業員何人かが手分けして掃除をし始めた。 何言っているか分からないテレビも電源を落とされる。 音がなくなり唯一の娯楽もなくなった。 従業員がモトサーに2人乗りして帰っていく。 当たり前だか「家があるっていいなー」と思う。 固くて青いベンチに座り どこで寝ようか考える。 ふと、 そこにいた親子が「差し入れ」をくれた。 タイ3日目⑥ 水とサンドイッチとちょっとしたお菓子。 「センキュー!」 ちょー優しいな。 わざわざ買ってきてくれたのかな。 すげーやさしい。 タイ3日目⑥ その親子と暫く話していたが親子が家路に向かったら本格的に一人になった。 先程追いかけていた犬が目の前を横切る。 パトカーが変な音を出して左の方に走っていった。 今日の宿はこんな所。 タイ3日目⑥ さーて。 ベンチに横になった所で寝返りもうてる幅もない。 ベンチの継ぎ目が痛くて寝れない。 コーティングがツルツルしていて滑ってダメ。 ベンチの後ろにある『なんだか分からない変な台』にカーペットが敷かれている。 横になってみる。 固い所で身体が凝りそうだ。 ここに横になるしかない。 貴重品を移動させて、 リュックを盗まれないように腕に縛りつけて、 それを枕にして目を閉じる。 爪の中が黒くて汚いのがストレスになる。 汗の匂いで蚊がたかる。 頭痒い。 24時19分。 ラン島の砂浜が懐かしい。