タイ3日目⑤

タイ3日目⑤
「マッサージはどう?」
「大丈夫。大丈夫。」
「1000バーツ。すぐ近くにホテルがあるわよ?」
「私はお金を持っていない。あなたは私とセックスしたいの?(もう聞いたろと思って)」
「そうそう。(『話が早いわね。』みたいに。)」
「あなたはセックスが好きなの?(もう聞いたろと思って)」
「そうそう!好きよ!(そこまで聞くの?恥ずかしいわよみたいに笑いながら)」
「ごめんね。僕もセックス好きだしあなたとしたいけどお金がないんだ。(もういうたれと思って)」
「じゃぁもししたくなったら私に声掛けてね?(嬉しそうに)」
「もちろんだよ。覚えてるよ。バイバイ。」
「バイバイ。」

余りにも誘われるマッサージの数についにここまで明け透けに伝えるようになった。
この方が明るく断われる。

言葉は英語でも表情を読み取れば困っているか本当に嬉しいかは分かる。 心からの正直な言葉は表情も正直になって凄く伝わる。

『チェンブリ』という街を目指しサーバタヤンストリートを歩き始め「バス停はどっちの方向?」と聞いていたらマッサージの話をされた。

「ウォーキングストリートを真っ直ぐ。
頭上にSAMSUNGのテレビジョンがある所を右。
そこがサーバタヤンストリート。
それからずーっと真っ直ぐ。」
酔っぱらっている白人が教えてくれた。

サーバタヤンストリートを真っ直ぐ行って突き当たりの道がスッビンロード。

タイ3日目⑤

今からカンボジアに向かう。
タイ3日目⑤

不思議なものでお先真っ暗の計画に向かっていくときは足取りはしっかりとしている。
お腹も減らない。

先程ウォーキングストリートでアランヤプラテートまでの行き方をホテルの人に聞いてみた。

「バスで?」
「バスで。」

従業員が従業員を呼んできてその従業員がさらに詳しく知っている従業員を呼んできた結果、
目の前にはカンボジアまでの行き方に詳しい年配のおじさんとそれを流暢な英語で伝えてくれる女性が立っていた。

「まず『パタヤ』から『チャンブリ』まで行って、
『チャンブリ』から『バリュー』まで、『バリュー』に着いたら乗り換えて『アランヤプラテート』だ。」
何時間ぐらい掛かるの?
いくらくらい掛かるの?
チャンブリまでのバス停どこにあるの?

2人は何度も何度も繰り返して教えてくれた。

「書いてあげるから。パタヤ→チャンブリ→バリュー→アランヤプラテート。これはタイ語だから。これを運転手に見せれば大丈夫だから。」

タイ3日目⑤

今の自分にとって一番重要な紙を手に入れるとズボン前左ポケットに丁寧にしまった。

僕は握手をしながら何度もお礼をした。
2人はこんなに喜んでくれるものか!という笑顔をしていた。
「ありがとう!ありがとう。助かった!写真撮ってもいい?」
2人はさらに驚いて応じてくれた。
「私たちを?もちろん!」
タイ3日目⑤

バイクが多いサーバタヤンストリートでヒッチハイクしたらどうだろう。

「この道の突き当たりまで乗せていってくれない?
本当?ありがとう!」

タイ3日目⑤

後で分かった事だがチャンブリ行きのバスターミナルまではとても歩いて行ける距離ではなかった。

この後もう1台ヒッチハイクをして2台のバイクで15分ぐらい。

1台目で降ろされたスッビンロードは車の往来が激しくて幅が広い道路。 周りには何もない所で、
田舎に高速道路が作られた!みたいな所だ。
タイ3日目⑤

夜20時23分。

こんな所で降ろされて本当に大丈夫?

2台目はそんな外国人が目に入って「何やっているんだ、こんな所で。え?バスターミナル?まだまだだぞ!いいから乗れ!お金?いらないから乗れ!」という感じのおじさんだった。

日本では冬の到来の季節、11月下旬のタイは38C゜。 蒸し暑さを向かい風が除いてくれる。
タイ3日目⑤

タイ特有の痩せているバイク(モトサイ)の後ろに乗りながら、
「この距離歩いてはいけなかったな、途中でのたれ死んでた、」と自分の向こう見ずな所を反省する。

バスターミナルに降ろしてくれたそのおじさんは目を合わせる事もなく、 感情なく走り去った。

バスの誘導員が「お前はどこに行きたいんだ?チャンブリ?乗れ!乗れ!これが最終のバスだぞ!」と叫ぶ。
タイ3日目⑤

まさに今出発する所のバス。 中の乗客が窓から突然現れた外国人を物珍しそうに見ている。

あわただしくチケット(49バーツ)を買って乗り込んで今までの事を思い返す。

パタヤからバスターミナルまでの距離と計画がどれだけ無謀だったか知る。
「奇跡的に間に合った・・。」 もしこれを逃したら深夜3時まで野宿だった。
タイ3日目⑤

タイ語で何を言っているか分からないハリウッド映画が流れるバスの中で僕は道を教えてくれた方、 ここまで乗せてきてくれた女の子とおじさんを想い、 目を瞑り、 暫く本気で合掌していた。