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これはただのあぜ道ではない。
渋滞は常態化している。
信号もない、ルールもないオールドデリーへの一本しかない動脈線は所々で瘤を作っている。
異臭はアラカシャンロードを北に行くほど鼻に突く。

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「あそこらへんには行かないほうがいい!」
「なぜだ?」
「living poor people」
たむろしていた若者が行く先を止めて助言してくれたことを思い出した。
ちょうど今歩いているここら辺だと思う。
この道の動脈瘤の原因は分かりやすい。
牛がその荷台を牽いているし、日本のバス程あるトラックが切り返せなくて立ち往生してる。
中央線がない道路に我先に前へ進もうとしてごっつんこしてる。
多くの種類の乗り物が(サイクルリキシャー、リキシャー、乗用車、牛、トラック、荷馬車、荷台牽き、人力車、徒歩の人間)
が青山骨董通り程の道を行き交う。
リキシャーは容量オーバーでサリーの家族を乗せ、どうにか対向車線にはみ出して、縫っていこうとするが、目の前からくる乗り物とごっつんこ。
トラックが車外に出たおっさんの支持で切り替えしている。
その切り返そうとする先が乗用車でごっつんこ。
乗用車は後ろにも横にも、ごっつんこがあってこれ俺もいけへんで!みたいな。
さぞかし誰もが「頭悪いな!何してんだよ!」と心では憤懣やるかたなくしてるのかと思いきや
「トラックだから。大きいし。しょうがない。」のような理解のように見える。

こんなところでライチを売るな。

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コンセントの元の部分を売るな。

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お前は何か言えよ!

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「Where from?」て聞かれて「japan」ていうの飽きたから「エジプト」て言ったら「日本人のように見えるね笑」て言われる。

カースト制が色濃く残っているインドでは何か乗り物にも序列が決まっているように思える。
それは見受けるところ、歩き→人力車→サイクルリキシャー→バイク→リキシャー→乗用車→トラック→バスの順番で、
あれだけやたらに鳴らすクラクションも目上の乗り物には鳴らさないみたいだ。
どうやら彼らは怒っているからクラクションを鳴らすというよりは「後ろからわたしが来ているぞ、今から横から通りぬけるぞ」という意味で鳴らしているようで、
ここの道路にいるサイクルリキシャ、バイク、リキシャ、乗用車、トラック、バスは当然鳴らす。その結果常時うるさい。
わたしは歩きも人力車も牛も、もし鳴らすものが手元にあったら玄関のベルでもジングルベルでも鳴らしたいのではないかと慮るが、
彼らは序列的にその憤懣を抑制しているように思えたし、そもそもそのような好戦的な感情は生まれないんだろうとも思った。
インドにいるとエネルギーはあるのにそれらは何かによって抑制されている気がする。

そんな「自分がユニークな存在でありたい」という小さな欲がこのリキシャーの屋根の部分なのだろう。

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だいぶ歩いたので陸橋の欄干に座る。

そこにいる「髭剃り屋」を眺めることにする。

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店舗も構えない、屋根もない髭剃り屋。

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あれだけあればどこでもできる。

インドでは必要なもの意外いらない。

おじさんは後ろに置いてある汚いペットボトルから受け皿に水を足す。

何の水かもわからない。
足された水をシャカシャカでかき回して客の顎に塗る。
泡だっていない顎に剃刀を添える。

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ん?ちょっとまって?

あの客のおっさん。。

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あ。やっぱそうか。

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ふざけてるな?
え?本当にふざけてるか?

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もういいわ!

行こう。行かなきゃ。