朝5時40分。
タージ・マハルを早く見たい。
デジカメは昨夜充電した。
ガイドブックをポーチに入れて少しのルピーをポケットにしまう。
部屋に鍵を掛けて1階フロントまで階段で降りて行く。
階段の勾配が急だからか、焦る気持ちからか、
前のめりで降りて行く。
ホテルの出口は動物園の檻の様にドシャーン!と閉められている。
え?出られないってこと?
フロントの扉も鍵が掛かっている。
エクスキューズミー!
ドンドンドン。
叫んでも、戸を叩いても手応えがない。
朝の太陽はホテルにうるさいぐらい日差しを浴びせる。
シーンと静まりかえっていて「もぬけの殻」
誰もいない?
フロントマンは帰った?ってこと?
わたしは「朝タージ」を諦めるしかないようだ。
部屋に帰るしかない。
折角着替えた服を乱暴に脱いでまたベッドに沈む。
何時になったらフロントは開くのだろう?
とりあえず9時ぐらい迄寝てもう一回行ってみるか。
それから夢を見たかもしれないし見なかったかもしれない。
携帯のアラームは暴力的に9時に起こしてくれる。
わたしはもし扉が開いていた時そのまま行けるように着替えて、用意して、鍵掛けて、白い階段を降りる。
空いている。
フロントも開いている。
相変わらずのインド人もいる。
開いている玄関の門を
「結局いつ開いたんだ?」としげしげと見つめる。
門はこのホテルが建った時からずっと開いていたぞ!どこみてたんだ?みたいな顔してる。
「こいつが今朝開かなかったんだよな、」と今一度確かめる。
この事実を僕はどう落とし込んでいいか分からず『ミステリー』にしてやろうかなと思う。
フロントには「そんなにいた?」と思うぐらいインド人が沢山いる。
みんな私服だから誰が「仕事中」だか分からない。
またそれが笑顔でじゃれあっているから
誰が遊びに来ている友達か分からない。
みんなフロントマンかもしれないし、
みんな近所の子供達かもしれない。
もういいや。聞きたい気持ちを抑える。とりあえず門は開いている。
「自由に外出できる」という宿泊者として当然の権利を我は今3時間越しに享受する。
16世紀のフランス市民みたいになった
わたしは朝9時過ぎにホテルを出る。