おもしろい芸人とつまらない芸人

昔昔あるところにそれはそれはおもしろいお笑い芸人がいました。

俺はおもしろい!と思っていたお笑い芸人が道を歩いていると、その町でそれはそれはつまらないとされている芸人に会いました。

「やあ。」

「やあ。」

「おい!つまらない芸人!何してんだよ。」

「草を採っています」

「相変わらずつまらないことしてるなー。草なんか採ってないでなんかやってみろよ!」

「えー、できませんよ。」

「お前は本当につまらないやつだなぁ。」

そして二人は別の方向に歩いていきました。

それから幾日か過ぎたある日

それはそれはおもしろい芸人が道を歩いていると町で2番目におもしろいとされている芸人が歩いてきました。

「やぁ」

「やぁ」

「お前この間のあれ見たぞ?」

「そうかー。」

「あの一言おもしろいなぁ」

「いやいや、」

「お前は2番目におもしろい奴だな。」

「いやいや。それはそうと知ってるか?」

「何が?」

「おもしろい奴見つけたよ。」

「へぇ、どんな奴?」

「なんでも角の呉服屋の息子らしいんだけど、主人がそいつに買い物を頼んだんだってさ、」

「はぁ、」

「するとその息子が3分くらいでただいまー!って帰ってきたと思ったら、

手には頼んだ品物と何処で採ってきたのかオオバコの葉っぱを持っていたんだってさ。」

「うん。」

「あまりにも早く帰ってきたもんだから、主人がお前はつまんねー奴だなぁ、なんか何処か道すがら寄ったり遊んだりしてくればいいのに。

本当真面目でつまらねー奴だなぁ。

って自分の息子に落胆していたんだってよ。」

「ほう、」

「するとそいつなんていったと思う?」

「何ていったの?」

「手に持っていたオオバコを差し出してこれを煮てください。っていうじゃねーの。」

「ほう。」

「何で草なんか煮なくちゃいけねーんだ?って主人が聞いたらさ」

「うん」

「その息子、『道草は家で食べます!』だってよ。」

その日の夜、

それはそれはおもしろい芸人は真っ暗な部屋の天井を眺めていました。

もう床に入って2時間です。

「つまらないやつをつまらないと思う俺がつまらない奴なのではないか?拾えればなんでもおもしろいんではないか?つまらないやつ程おもしろいのではないか?つまらない奴なんていないんじゃないか?なんであの時気付かなかったんだろう。俺こそクソつまらねー奴だ!!」

別のある日、

それはそれはおもしろい芸人が道を歩いていると向こうからそれはそれはつまらない芸人が歩きながら石を拾っていました。

「やぁ」

「やぁ」

「おい、つまらない芸人。なんかやってみろよ!」

「えー、できないよ。」

「ところでお前、何で石を拾ってるんだい?」

「へへへ。」

「君は本当はおもしろい奴かもな。」

その日以来二人は仲良くなり、

おもしろいお笑い芸人はつまらないとされている芸人、人や物、事象からおもしろい所を拾い、芸の幅を拡げ、学び、

町でつまらないとされている芸人はおもしろい芸人になるのでした。

そして二人ともみるみる力をつけましたとさ。