『確かに残酷な出来事だったが人間はどんな困難も乗り越えてゆける』というメッセージ。

原子爆弾が落とされた瞬間を描いた『明日の神話』を今日の『終戦記念日』にあわせて汐留まで見に行きました。

これは『核兵器なんて笑い飛ばせ』というメッセージで、真ん中の骸骨が笑みを浮かべ、右下には水爆したマグロ船第五福竜丸や、逃げ回る動物達、など描かれています。

こんな『明日の神話』が完成した時の岡本太郎先生のエピソードがあります。

お互い本当に通じ合ってたのか。という話。

メキシコのホテル『オテル・デ・メヒコ』のオーナーマニュエル・スュワレスからの依頼で、『巨大な壁画を描いてくれと』頼まれた岡本太郎先生は、高さ5.5m。幅30mのこの壁画を総工費86億円掛けて描きました。

出来上がった『明日の神話』を見た依頼主スュワレスは『すばらしい!世紀の傑作だ!』『すばらしい原色だ。』と感動。

岡本太郎先生は『何言ってんだ。』と思ったそうです。

『メキシコこそ原色の国じゃないか!窓の枠は黄色、来ているものだって明るい色。生活に溢れてるじゃないか。』しかし太郎先生は思いました。

ひょっとしたらメキシコの人々が気付いていない原色の使い方に自分が入り込んでしまったのではないか、確かにメキシコの美術品はどれも暗い、どんよりしている。

そしてスュワレスに問われたのです。

『あなたはどういうおつもりでメキシコで仕事をしているのですか?』

太郎先生はまた言いました。

『まただ。何を言ってるんだ!』

『メキシコこそ世界芸術の中心地になるべきだから、私はそれに協力するのだ!ロンドン、パリ、ニューヨークが芸術の都になっているが、政治・経済の中心でもある。経済力や軍事力に応じて芸術の番付が決まるなんて卑しい!メキシコこそ芸術の都だ』

すると依頼主スュワレスは嬉しくなって『あなたはメキシコ人の中のメキシコ人だ、メキシコの侍。チャロだ!どうだ?メキシコに国籍を移さないか?』

すると太郎先生はまたまた言いました。『まただ。本当に何を言ってるんだ。』

『日本がいいに決まってるじゃないか。日本では全人間的に発言し暴れられる。だからこそ四方八方から足を引っ張られる。あの楽しさは捨てられないんだ!』

するとあんだけ『何を言ってるんだ!』と言われたスュワレスは思ったそうです。

『この人。最後の方何を言ってるんだ?』

オテル・デ・メヒコは開業される事無く1970年倒産。2003年9月までこの壁画『明日の神話』は行方不明になる。