カンボジア2日目⑨

「日の入りの時間は大体いつ?」

「大体17時20分頃かしら」

「そうか、あと2時間ぐらいあるね、じゃぁまたその時来るよ。また後で!」

「待ってるわよ。」

アンコール遺跡群は丁度皇居の内堀通りのような大通りで囲まれていて
要所には守衛が古くさいパイプ椅子に退屈そうに座っている。
たまに通る外国人を抜き打ちで捕まえては「パスを持っているか?」と提示する事を要求するのだが、
毎日のルーティンワークに緊張感は削がれ
ぽかぽか陽気と観光地という解放感で
もはや建前で座っているだけで
本音はただ話し相手が欲しいようだった。

その証拠に「待ってるわよ。」が心からのような笑顔だった。
それかそういうカンボジア人特有の「笑顔に特化した歯茎」だったのかもしれない。

今、
遺跡群を自転車で廻りきり、
最後に本日2回目のアンコールワットを拝んで来た所だ。

ただ2回目のアンコールワットは自分の英語リスニング力のなさのせいで気が気ではなかった。

ひょっとしたら俺は囚われの身になって身ぐるみを剥がされるのではないか?
という恐怖感に駆られていた。

僕は観光客がいないちょっとしたアンコールワット敷地内の高台に腰をおろしズボンのベルトをゆるめ始めた。

下着の中を覗きおちんちんを認めると
そこにパスポートと10ドル札を隠して
急なお客さんで押すな押すなの凸凹な股間をしっくりさせる。

ジーンズのベルトの穴に留め具を通し

右足の裾を上げ靴下を下ろし、
幾重にも折ったトラベラーズチェックを忍ばせた。

「秘密警察」に荷物を没収されてもいいように。

カンボジア2日目⑨