カンボジア2日目⑥

あの女の子は何だったのだろう。

「勘違い」ではないし「幽霊」でもない。

お互い認識してて、
意志疎通があって、
最後の方は相手に合わせてカマ掛け合っていた。

ただ数いるカンボジア人や外国人がいる遺跡で僕だけが見えている女の子だった。

タケオハウスで1日1ドルのボロボロなレンタル自転車か3ドルの比較的しっかりした自転車か選ぶ。

ブレーキが危ういと不安だ。
出先でパンクなんてされたら余分な時間と労力が掛かる。

ハーフパンツとサッカーユニフォームというラフな格好で早朝行ったアンコールワット遺跡郡に改めて向かう。

どこをどういったっけ?

あそこの人に聞いてみよう。

ウェアイズダアンコールワット?

この3人暑い中なんで座っているんだろう。

センキュー。

背が高い建物なんて外国人向けのホテルだけ。

赤茶けた土壌。
歩道がない一本道

自転車で走り回っている奴はいない。

こいでもこいでも見えてこない。

ゲストハウスから一つ目の遺跡ポイントまでえらい時間が掛かった。
カンボジア2日目⑥
どのくらいか説明すると、
都内でいうと、

新宿から甲州街道を四谷、内堀通りを左皇居を眺めお茶の水方面へ後楽園を真っ直ぐ
上野公園あたり迄ぐらいの距離を自転車で走ったと思う。

かなり骨。

こいでもこいでも次の曲がり角が見えない。

僕は自分自身を励ましながら自転車を漕ぐ事で保つ。
強めな太陽のせいか、
ついには頭までハイになってくる。

「この為に毎日駒沢公園を走って来たんだ」とか、
「がんばれ森田!」とか心で思いながら自分を鼓舞する。

いやいや自転車こいでるだけだろ!
と距離を置く自分もいる。

もう何年分ペダルをこいだろう。

ペダルをこいでるのか
ペダルにこがされているのかよくわからなくなってきた。

足を下に持って行く。
すぐに上に上がってくる。
右が下がれば左が上がる。
結構ふわっと上がってくるものだ。

もし今誰かに
カンボジアに何しに来たの?って聞かれたら、

そんなの決まっているだろ!ペダルをこぎに来たんだよ!
と一喝するだろう。

いよいよ精神も危うくなってきた。

もしあなたは誰ですか?と聞かれれば、
僕ですか?
ペダルの奴隷です。
よろしくお願いいたします。
と自己紹介するだろう。

手放し運転をしたり
たちこぎしたり、
もう一通りやった。

鼻歌も歌った。

両サイドの森林も今の自分には見えない。

余りにもハイになった僕は自転車大好き男という一発芸も思いついた。

俺は何をしているんだろうと疑い始めてきた。

一通りセンチメンタルにもなった。

あの人何しているかなぁ?

日本の友達を想う。

あれ?
この自転車!
よーく見たら

千葉県から盗難された自転車じゃない?

カンボジア2日目⑥
日本で盗まれてカンボジアのシュリムアップまできたのかい?

良く盗難物は海外に飛ばされるって聞くけど。

1時間程自転車をこぐと森の中に遺跡が顔を出した。

ただそれらは当たり前だがアンコールワットを拝んだ後では何か物足りないものだ。
観光客もまばら。

この広い遺跡郡の中でも観光客は「違い」を求めているらしかった。

「あそこは賑わっているな。なんだろう。」

外国人がいる所に商いありだ。

カンボジア2日目⑥

これを見て分かるように外国人を「入り待ち」している

写真を売る5歳の男の子。

花束を渡してくる妹。

「いらない。いらない。」

アクセサリーを地べたに広げている歩けないおばあちゃん。

ただ単の物乞。

ガイドをしてやるという少年。

何を言ってるかわからない兄弟。

それらのディスイズカンボジアが芸能レポーターか!と突っ込める程に歩いている外国人を囲む。

それらをクリアーすると音が聞こえてくる。

木陰にござを敷いて
いつからやってたの?と質問したくなるような演奏が行われている。
盲目の人
片手がない人
脚がない人
耳が聞こえない人

各々民族楽器で叩いたり吹いたり弾いたり

よく見たらなんか書いてある。
「この方々はカンボジアの地雷によって・・・」云々。「喜捨」だ。

前世に悪行を働き今世にその報いを受けているヒンドゥーを見たことがある。
目の前の人は前世も来世もない。
今世でやられた!と訴えている。

ある程度歩くと音楽が止んだ。

後ろを振り向いたらさっきの方々は休んでいた。

そしてまた外国人がある程度近づいて来たら
演奏を再開していた。

その現金な感じと要領のよさに「ですよねー。」と思う。

タ・プローム。

遺跡群の中でも人気の遺跡。

この木根っこの根ざし方。

カンボジア2日目⑥
カンボジア2
日目⑥
ここの遺跡では圧倒的な積年のパワーと「そこ入っちゃいけない所だろ!早くおっさんどけよ!」のコラボを写真におさめておく。
カンボジア2日目⑥

おいおっさん!
お前がそこに入ってポージングしてバカ彼女が写真に収めたから
みんながやりだしたじゃねーか!
その自然の猛威を「単独」で撮らせろ!

ヨーロピアンかアメリカンか知らないけどお前らそーゆー領域を越えて制覇したがる所あるぞ!(怒)

この後、枠を越えて写真とる奴続出。
単独で撮ることを諦めた。
僕は志半ばにその遺跡を後にしてまたペダルをこいだ。
森林浴に効能はあるのだろうか。
カンボジア2
日目⑥
「あ、あそこにも遺跡がある。」
カンボジア2日目⑥
問題の女の子を見たのはその遺跡に立ち寄った時。

僕は幽霊というような類いは信じないしあっても気付かないのだが
あれは何だったんだろうと思う。