舞台で演技をしている女性に池谷はシャッターを切った。
その時、なぜカメラを向けたか、その理由はハッキリしていた。
終演後、一緒に食事にでも行き「写真撮っておいたよ」と告げて「そうなんだ!ありがとう!」
それだけだった。

よくある友人同士のやりとりを期待していた。

ただシャッターを切り終わった後、池谷にある想いが込上げてきた。
女性に内緒で写真を撮ることに何か悪いことをしたかのような、罪悪感に囚われたのだ。

演技も終わり、カメラを下ろし、プレビュー画面を確かめる。
そこにはただ単に「記念として撮ってあげている」というよりは
「お目当てで撮った」(お目当てで撮っているのだけれども)かのような、
上出来な仕上がりになってしまったのだ。

女性の顔のズーム、瞬間瞬間を捉えた連続写真、
カメラ素人の池谷にしてみれば、枚数もプロ並に撮ってしまっていて、
後ほど軽く見せれない、
何か違う想いまで伝わってしまうような枚数と出来栄えだったのだ。

池谷は決めた。
これは見せないようにしようと

その瞬間池谷は女性に対して決定的な覚悟をした。

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