グルザーは自分がわたしと目が合う前から叫んでいた。

なんだ?どこからだ?
何年来も疎遠だった地元の旧友と再会を果たしたような「Frend!!!」でわたしを呼び止めた。
その距離の縮め方に圧倒されているうちにわたしは握手をされていた。
グルザーの手は厚く、握力が強い。

0411

このいい人そうな顔。

「どこにいくんだ!?」
口調も速くて次の言葉が出る前に
「ちょっとこっちにこい」
牛やリキシャー、サイクルリキシャーが行き交う道路の真ん中から少しだけ端に寄ると、
「どこいくんだ?」
と引き出す。
わたしは不信感より先に「こいつはなんだか面白そうだ」と、好奇心の脇をくすぐられた。
「インド人の普通の生活が見たい。どこかお勧めはないか?」
グルザーは「そんなことか笑」とのけぞりながら笑うと
「朝食はとった?」かと尋ねてきた。
「まだだ」
「まだ?OKOK。いいところしってるから。ついてこい。」
朝食でもとりながらそこらへんの話をしようじゃないかということみたいだ。

ニューデリーレイルウェイ駅付近の朝は早い。
駅に目指す人が多い中駅周辺を拠点にしている物流が郊外に向かう。
彼らは両腕になにやら重いものを持ちながら歩いたり、
白くて汚い牛に牽かせたり、自転車より細いタイヤ荷台に乗ったり、痩せこけた人に牽かせる。
わたしは原始的な躍動感の隙間をスイスイいくグルザーの背中にくっついていく。

道々で「わたしはこういうものだ」と証明書らしきものを提示されるがどうでもいい。
信用していないし信用している。

車も通る道路を横切り汚い店が立ち並ぶ歩道を2人の男がゆく。
「ここの道路の名前はなんと言う道路なの?」
「リビクタロード」

暫く行った後、突如店先でフライパンを操り何かを作っている主人にグルザーは話しかける。

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「ここだ」
着いたみたいだ。

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「ここ?せまくない?」
なんか喫茶店のような場所を想像していたのだがインド式のそれに連れて行かれた。
インド式のそれが喫茶店だというのはジュースボックスがあるかどうかで、
これがあれば日本で言うコンビニだし奥にイートインスペースがあれば喫茶店なのだろう。

店内。

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ビルとビルの間の、警察に追いかけられた泥棒が逃走経路に使うようなスペースで
朝食を頂く。

頼んでいないのにチャイが出てきた。

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グルザーが前もって頼んでいたのだろう。

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ラスク?と思うぐらい冗談だろ程の小さいインドにとって「本気の食パン」も出てきた。

「インドにはいつ来たんだ?」
「2日前だ」
いつ帰るんだ?」
「4日後だ」
彼らがわたしの滞在期間を聞くのはその中でよりインドの魅力が分かる訪問場所と経路を組んでくれるのだろう
グルザーはわたしのペンとノートを取って北インドの地図を書きだした。
「ジャイプルには行ったか?」
ホテルのフロントも勧めていた「ジャイプル」という所はどういうところなのだろう。
「ない」
「そうか。。そしたらお前はジャイプルに行く。」
決定したみたいだ。
「それからプシカルに行きなさい。プシカルは?」
「ない」
「笑。じゃあジャイプルの後、プシカルだ。それからビカニエル。ビカニエルは?」
「ない」
「ビカニエルに行った後デリーに帰って来る。どうだ?笑」
「センキュー笑」
ちょっと参考にしようと思う。
私が引っ掛かっているのは急ぎの旅にならないかということで、
じっくり腰を据えてインド人の生活を理解したいということなのだが、
正直場所はどこでもいいが、観光客が訪れるような所じゃなくてもいいし
有名な建造物を見上げたいわけじゃないのだが。。
ただ今日既に2回聞いた「ジャイプル」はどんなところなのだろう。
エッグオムレツ。

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あ。やっぱりここに置くのね。
「ニューデリーでは普通の生活は見れないぞ?」
「そうなのか」
「ニューデリーは郊外から働きに来る人ばかりだ。17000万人が訪れるがみな郊外からの人だ。」
「そうなのか」
「時間あるか?」
「ある」
「ちょっと行こう。紹介したい友達がいるんだ。」
「わかった」
グルザーは慣れたようにリキシャーを停め、「ここからすぐだ」と促す。
リキシャーはグルザーの運転手に何やら告げる。

インド人は最初親切心で助けてくれる。
ただ何か考えが変わる瞬間がある。
何かで距離が離れた時、友達だった目線が観光客になるのだろう。

インドについて教えてもらい朝食を取ったまではグルザーは確かにわたしをFriendとして接していたのかもしれない。