ガンジー国際空港到着口を出たわたしはニューデリー駅を目指す。

ローカルバスは電柱に「CityBus」と書かれていてニューデリーまで75ルピー(150円)。

「いいか?ニューデリー駅に行きたいんだな?ガバメントタクシーを使え。(政府公認のタクシー)すぐそこだ。」と助言するものもいる。

外国人を乗せて法外な料金を請求することが横行しているインドでは予め公的に決められた値段を第三者に払い、
そこから手形を発行して、ちゃんと安全に目的地へ着いたらそれをタクシーに渡す制度がある。
お金のやり取りはしない分もめることが少ないと聞くがその分割高なのだろう。

男の忠告を無視してわたしは一番安いローカルバスに乗ることにした。

外国人が乗り込むのが珍しいのか既に車内にいるインド人が「あ。外国人だ」となるのが分かる。
じっと見ている。見られている。

目が合ってもじっと見てる。
わたしもじっと見つめる。

そして「ハァイ」とやる。
向こうも「ハァイ。」とやる。

何を思うのだろうか。

市街まで行くのをいいことに土嚢袋のような袋を車内に置き、

出ては入って積んでゆく男がいる。

外国人を外国人と確定した皆さんのわたしへの好奇心はそちらに移る。

「これはすごい雨だ。。」

この豪雨の中ワイパーを動かさないでバスは走り出した。
バケツをひっくり返したような雨が1時間に30mm~50mmだと聞いたことがある。
もし今「ニューデリー駅に着いたぞ。」と言われたら目的地を変えてでももうちょっと乗るだろう。

行きの飛行機で隣だったインド人の言葉を思い出す。
「インドは何回目だ?そうか。一番暑い時期に来たね?笑 そうだよ。日中なんか46℃だからね。笑」

日中暖められた気温が上昇気流を作ったのだとしたらこの雨を見る限り今日は相当暑かったのだろう。

わたしは「今日いっぱいこの雨は降り続くのか?」と音楽を聴いていた男に尋ねた。
男はノキア製のスマートフォン(そんなに小さいスマートフォンがあるのか。と驚いた)を片手に
「わからない」という。
雨がどうなるのか分からないのか、英語が分からないのか、

どのような音楽を聴いているのか、わたしには分からなかった。

この窓に横殴りに打ち付けるのような豪雨を見て

わたしは「この外国人何するんだ?」という視線を浴びながらリュックの中身を整理した。

この地球の終わりみたいな雨の中、外に出されたらリュックの中は濡れる。

電子機器を奥のほうにしまい、首から提げたカメラはTシャツの中に入れ我が子のように守る。

わたしは「やはりウインドブレーカーを持ってくればよかった。」と前回役に立ったことを今思い出し、

同時に「雨よ。早く止んでくれ」というよりは「バスよ。頼むから今はニューデリー駅に着かないでくれ」と願った。