「いい対戦だなぁ」

W杯南アフリカ大会アルゼンチン対ドイツの試合。

ガンジー国際空港のコーヒーショップ店内にテレビが設置されている。

そしてその大型テレビジョンからは好カードが流れている。

来るときに一応一通り録画して来たけど生で観たい試合。

周りの外国人もチェックインまでの格好の暇潰しとあって、
そこは席取りに血眼になる程人で溢れ返っている。

群集は両選手がシュートをする度「キャー!」だの「オー!」だの盛り上がっている。

そのリアクションでどこの国の人か分かる。

すぐそこで「あなたはドイツから来たの?」なんてやってる。

頭を抱えているあの人はアルゼンチンのファンだろう。

わたしは「これだけ多くの外国人がインドのどこにいたんだろう?」と思う。

ちっとも見なかった。

そろそろハーフタイムだ。
わたしは席を立つと人々をかぎ分け店を出た。

アーグラ駅にわたしはなんとか着いた。
「なんとか」というのは途中リクシャーがパンクしたからだ。

パンクした瞬間、お金を払わず飛び降りてずんずん歩きながら代わりのリクシャーに乗った。

アーグラ駅を出たわたしはまたニューデリーにきた。

列車は2時間も遅れた為予定していたアーユルヴィーダも体験出来なかった。

駅に着くと待ってましたの「ヘイ!リクシャー?」
「ヘイジャポン!」
「ホェアユゴー?」

邪魔邪魔どいたどいた。

そしてプリペイドタクシーで国際空港まで向かう予定が散々並んで
わたしの番になったチケットの窓口で
よりによって手持ちのお金が「ドル」しかなかった為購入出来ず
「ルピー」に変える銀行を探さなくてはならなかった。

聞くとここら辺に外国為替はないという。

わたしはこうやって新たに探すより以前に行ったことのある、
コンノートプレイスにある「トマスクック」を目指した。

ここからだと時間が掛かるがこうしてすり減らして「読めない」方が恐い。

適当なリクシャーを見つけて乗り込む。

「10ルピー」だという。

「オーケー。」

今なら100ルピーでも払うから確実に正確に目的地に着いて欲しい。

そして心配をよそに難なくコンノートプレイスに着いた。

わたしはこの『合格リクシャー』に
「私はさっきの所に帰りたい。ここで20分待っててくれないか?
何ルピー払えば待っててくれる?」と聞いた。

「エイティーン。」

「18ルピーね。」
わたしはそれを了承して「マックの前のここにいて!」と言い残し走って換金しにいった。

トマスクックでドルをルピーに変える。

オーケー。

ちょっと腹へったな。
機内食不味いし少ないしマック行っとくか。

かねてから食べたかった
『ベジタリアンマックバーガー』を一口食べてみる。
イスラム教特有の野菜だけのハンバーガー。

まずっ。

リクシャーは炎天下で律儀に待っている。

前にもちょっと感じたが、インド人は「ご主人様」みたいな関係に従順な気がする。
しっかり待っていてくれてる。
わたしが浮気して、
もっと安いリクシャーと交渉して、
乗って行ってもマックの前で立っていそうだ。

待ち合わせの場所に戻って「さっきの駅に戻ってくれ。」と伝える。

インドの渋滞に手こずりながら帰る。

こいつらは「そこ危ない!スレスレで大丈夫っ?」
って感じる所を通る。

わたしは乗りながら「こんなに長い距離走って18ルピーってすごい安いな!この人稼ぎになるのかな?」と心配になる。

かれこれ1時間半以上拘束させて日本円で40円だよ?

目的地に戻ってくると、
わたしは快く『18ルピー』を渡したらそれを受けとったインド人はビックリしてた。

でた!
『インド人もビックリ』だ!
『生インド人もビックリ』だ!

彼は「ヘイヘイ!足りないよ!」と言い出す。

聞くと「エイティーン」はどうやら「エイティン」、『80』と発音したらしかった。

『エイティーーーン!』
と『エイティンっ!』ね!

もっと切れ切れ!
エイティっ!ね!?

ったくっ!

こればっかしは自身のリスニング力のなさのせいだし、
もうインド最後だしくれてやるよ!

ハイ!

どおりで安いと思った。

駅近くにあるタクチケ売り場でレシートをもらう。

近くにいた「待ってました」とばかりのインドの兄ちゃんが「こっちこっち」で駐車場まで案内する。

そして目の前にはタクシーじゃなくてボロボロのリクシャー。

え?リクシャーで空港まで?

「イエスイエス!」

わたしは先程一体何にお金を払ったのだろう。

もういいわ。

最後だし。

まだ時間ある。

のんびり風景見ながら行こう。

ガンジー国際空港でチェックインをしようとそれらしきゲート前に行く。

空港関係者とおぼしき人にEチケットを見せる。

細くて背の低いインド人女性に「あなたはチェックインまだですよ。」と言われた。

わたしは暇潰しにあれこれ回ってみる。

美味しそうな食べ物がいっぱい売っている。

ピザ専門店。
デザート専門店。
パスタ専門店。

なんでこれらをニューデリーに置いてくれないのだろう。

皮肉なことにインドで唯一安心して食べれるお店があるところは空港かもしれない。

さっきから韓国人にじろじろ見られる。

多分肩に韓国の国旗シールが貼ってあるからだと思う。

「アーユーコリアン?」と先程マックで聞かれた。

「ノー、アイムジャパニーズ。」

多分彼らはニューデリーに降りたもののインドのヤバさにコンノートプレイスまで来た。

そして助けを求めて自国の人に声を掛けたのだろう。
1日目の自分と一緒の境遇。

したらまさかの「ジャパニーズ。」

彼らにしてみれば「じゃぁその腕の国旗はなんなのさ!!」だろう。

空港でもあ、韓国人だ!みたいに見られる。

なんか変な感じだ。

そして相変わらず日本人は見ない。

インドは日本人に不人気なのかな。

あっ。あそこでサッカー中継流れてる。
ライブかな?録画かな?

あっライブだ。

わたしはコーヒーショップで時間を潰すことにした。

アルゼンチン対ドイツの試合がハーフタイムを迎え
わたしは「そろそろかな」と立ち上がる。

本日2度目の『空港関係細身インド人』に「私の乗る飛行機のチェックインはまだ?」と聞いた。

すると細身は、

「え!?
あなたまだいたの!?
ちょっとEチケット見せて?(Eチケットに目を落として、)ちょっと!あなた!急いで!もう飛行機出発するわよ!」

「センキュー!」

「え?ここはチェックインロビーじゃない?」

「あっち?」

「あっちなの?」

「センキュー!」

「バアイ!」

インドから日本へ帰国
インドから日本へ帰国

インドのそれから