「彼らが『ボートに乗らない?』って聞いてるけどケンジはどうする?」

タージ・マハル内で写真を撮っていたら韓国の女の子に聞かれた。

タージ・マハルは朝早くから人々で賑わっていた。

金髪の熟年夫婦、
家族連れ、
みんな重そうなカメラを首からぶら下げている。
サリーを着た大家族は意外にもはしゃいでいる。
はしゃいでいる所からして初タージなのだろう。
僕は「インド人もやっぱり観に来るんだ。」とタージ・マハルの人気に圧倒されている。

アジア系も多い。
そんな中で先程
韓国の女の子が同じ韓国の男の子2人組に出会った。
お互い「あ、韓国人だ!」と思ったのだろう。
韓国語で何やら話した後で一緒に行動していた。

向こうの男の子達は日本人の僕の方を見て女の子に「誰なの?」と聞いているみたいだ。

そこら辺は女の子がどう言ったか分からない。
多分「同じホテルで出会った。」と適当に紹介したと思う。
男の子達は「あ、そうか。」とすぐに『この変なコンビ』の謎が解けると、
「よかったら一緒に回らない?」と誘ってきた。

インドで自国の人と出会えて安心したのだろう。

以後、
韓国人3人と日本人1人の4人でタージ・マハルを回る事になる。

昨晩レストランで女の子と食事をしている時も韓国人女性2人組と知り合う。
そして4人で食事をした。インドではよく韓国人と会う。
そういえば成田から乗ったエアインディアの隣の席も韓国人だった。
韓国ではインド旅行が流行っているのかもしれない。

歩いてると彼らは多分これを聞けば共通点として盛り上がるだろうという質問をしてきた。
「ドゥユノー『カシオペア』?」
「カシオペア?」
僕は夜空に浮かぶ星座だよね?と説明したが違うみたい。

「歌手」らしい。

「ソーリー、アイドンノー、」
女の子が何やら韓国語で男の子に言っていた。

なんとなく「日本人は知らないんじゃない?」と言っているようだ。

僕も負けじと「『嵐』は知ってる?」と聞いたら
「知らない。」という。

韓国では知られてないのかなぁ。
SMAPにしておけばよかった。

そしてある程度回った所で女の子が「彼らが『ボートに乗らない?』って聞いてるけどケンジはどうする?」と聞いてきた。

なんでもタージ・マハルを出て、
イーストゲートをぐるっと回って、
タージの後ろ側に行くとボートに乗れる所があると男の子は情報を掴んだらしかった。

昨日僕は1人でそこに行った。
タージ・マハルの後ろを流れているヤムール川に写真を取りに行った。

僕は「あそこの事だ。」と思う。

イメージは悪い。
あそこら辺は確かにボートがあったが一見路上生活者が多かった所だ。

僕は「もちろんオッケーだよ。」というと4人でイーストゲートに向かう。

僕はタージ・マハルを背にして出口に向かう途中、
何度も振り向いてタージ・マハルを観ては無意識に「凄いなぁ」と日本語でもらしていた。

自然と出てきてしまう。

韓国人3人が「?」になっていたので
僕は「ビューティフルだなぁ」とわざわざ分かるように意識的に感嘆した。

「だなぁ」が日本語だったからどうだろう。
でもビューティフルだけで通じるだろう。

通じなかったら知らない。
僕は何を気にしているんだろうと思う。

昨日行ったルートを今日もまた行く。

4人で歩いてると
12才ぐらいの子供が
「ボート?」と慣れた口調で聞いてきた。

韓国の男の子が
「ハウマッチ?」と聞く。
子供は「20ルピー、4人で80ルピーだ。」とそのボートが作られるずっと前から決まっていたみたいにさらっと言い放つ。

この子供との会話が後々また事件になる。

「オッケー。レッツゴー。」

僕は一番後ろからその様子を見ていて
「これは絶対だまされるな。」と思った。

『インド』はこれじゃ終わらない。

僕は歩きながら子供に聞いた。
「エクストラチャージないか?」
「ない。」
言い方を変えて、
「コミッションはないか?」
「ない。」
川をボートで向こう岸まで渡り、
さぁ帰ろうになった時、
向こう岸に帰るにはまたお金が必要だ!と言われたらたまったもんじゃない。

僕は更に
「ラウンドトリップか?」と聞いた。
「そうだ。」

昨日のリクシャーとの大モメの件もある。

韓国の人達にしてみれば「入念に聞く日本人だなぁ」と思っただろう。

こんぐらいしてもまだ足りないくらいだ。

奴らは事前に言ってないことを付け足してくる。

向こう岸に行ったら『チャイ』を飲むのは当たり前だ!」
こんなことを言われ、
チャイ代も払わされるかもしれない。

そんな事は知らず、
かるーくオッケーして韓国の3人は前をいく。

タージ・マハルの外壁を沿って歩く。
砂利道になっていて右手側は草がボーボー。

そんな中で裸で生活をするインド人を何人も見る。

300メートル近く歩くとまた簡単な柵があって
難なく入って行くと
目の前に広がるのはヤムナー川。
昨日の朝僕は来た。

すぐ右手に石で作られたベンチがある。

インド人のおっさんがそこに手を背もたれに拡げて、片足をベンチに乗っけて、座っている。

子供が座っているおやじに話をする。

おっさんは4人の外国人を見た。
「あ、外国人だ。」と思っただろう。

韓国人の男の子が
「1人20ルピーだよね?」と子供が言っていた事をおっさんに確認する。

おっさんは
「4人で80ルピー?ノーノーノー。」と突っぱねるとそこにいる4人の外国人を1人ずつ指差して

40、

40、

40、

40。

160ルピーだ。と「当然顔」する。

韓国の男の子がこの「衝撃的告白」をされると

「え?この子供は『20』って言ったぞ?」とやり合う。

「はいきましたぁ。」と僕は思う。

予想が当たったという嬉しい反面、

はらわた煮えくり返ってくるのを確認できた。

韓国の女の子は
「安くならない?」
と値段交渉をしはじめる。
別の韓国の男の子は
「おい言えよ!」と子供を急かす。

子供はバツが悪いのを顔で訴え
「20ルピーにならない?」とおっさんに頼んだ。

子供の表情からして
子供は正規の値段を知らなかったのだろう。

もう1人の男の子は
「じゃぁ間とって30ルピーでっ!ねっ?30ルピー!」とおちゃらけて値切ろうとする。

まんまと騙された。
甘かった。

子供の値段を信用しないでとりあえず場所まで案内させて、
子供が提示した値段を最初にこちらから言わないで『おっさん価格』を先に聞けばよかった。

「値段を負けて」とかいう話ではない。
嘘をつかれたのだ。
絶対20はそのままにさせる。
店頭で280円だった牛丼が入ったら倍の560円だったんだ。
「負けてよ〜」はおかしい。

僕はおっさんに
「俺は乗らない。だからみんな20にしろ。」と伝える。
おっさんは「駄目だ40ルピーだ!」と折れない。

「子供は20ルピーと言ってたんだ!僕らは子供と約束している!」

おっさんは「駄目だ40ルピーだ。」と折れない。

僕は完全にスイッチが入った。
「あれは誰の子供だ?」
「サウスゲートの子供だ、うちとは関係ない。」

「関係なくはない!お前は誰にいくらのコミッションを払うんだ?」

「子供だ!」
「じゃぁ関係ある!お前らに属している子供だろ!」

女の子は「もういいよ、」と僕をなだめる。

「いや、よくないんだ。こいつらにこれからも騙される旅行者がいるんだ。」
と伝える。

とりあえず一人で言い合ってもなので、
一旦韓国の3人が向こうのボートに乗るまで休戦する。

「乗る?」

「ごめんね。俺は乗らない。3人で行ってきてくれ。」

僕はおっさんの横に座る。
端から見たら仲がいい2人に見えるだろう。

かなり近い。

ここを下りていった向こうの方で3人がボートに乗り込んだのを確認した。

3人の他にここまで連れてきた子供とボートを漕ぐ子供が乗り計5人。
ボートが岸を離れていく。

僕はおっさん向き合い先程の続きをする。

「おいどういう事だ?」

「お前は日本人か?コリアンか?」
「コリアンだ。今関係ないだろ。」
「俺等は1泊ホテルに泊まるのにいくら掛かると思う?」
「知るか!関係ない!」

「45ルピーだ、でも外国人はいくらで泊まる?我々とお前らでは値段が違うんだ!」

「そういう事じゃない!約束を破ったのはお前だ、
いいか?私達は1人20ルピーと子供と約束をした、来たら40になった。あなたは『子供はうちとは関係ない』と言った。じゃぁあの今3人が乗ってるボートは誰のだ?」

「私のだ。」

「他に乗ってる奴はだれだ?いいか?船を漕いでいる奴と連れてきた子供だ。連れてきた子供が乗ってるということはあの子供はお前に属している事になる。
お前に責任がある。
なぜ全てのインディアンはこうなんだ?」

「外国人は幾らでホテルに泊まる?」

「450で泊まった。それがどうした?」

「我々は20で泊まる。」

「今それは関係ない。
それなら最初から40ルピーだと言わせればいいだろ?いいか?旅行者は皆このインドを想像して期待して観光にくるんだ。
何でお前らはウソをつく?」

「あそこの小屋は何の宗教だか知ってるか?」

「知るかっ!」

「そうだ!シヴァ(神)だ!
よくわかったな!」

僕は余りに興奮して「知るか!」を日本語で言ってしまった。

向こうは早口の「知るか!」が「シヴァ!」と聞こえたらしく

「正解だ!よくわかったな!」と言われた。
僕は思わずふいてしまった。

ねぇおっさん!
あんだけ怒っていた日本人が「シヴァ!」て言うわけないでしょ?

韓国人3人がボートから帰って来た。

僕は3人が安全に戻って来たのを機に切り替える。

もうその話をおっさんとするのを止める事にした。

僕は韓国の男の子に
「キャンユーテイクアグッドピクチャー?」
と聞くと「イェイ!アイキャン」と嬉しそうに答えてくれた。

じゃぁよかったじゃん。
と思った。

ボートに乗った人が満足してるならそれでいい。

今朝の8時半だ。

子供も入れて4人でまた来た道を帰る。

子供の腕に女の子がシールを貼ってあげている。

出会う人出会う人にシールを貼ってあげているらしかった。

子供は嬉しそうに笑っていた。
僕はそもそもお前だぞ!
と思っている。
「こいつ。今度来る旅行者にはボートは『40』って最初からちゃんと言えよな!」と言ってやりたかった。
そんな子供に女の子はもう一枚別のシールをあげていた。
子供は嬉しそうだった。

4人で歩いてると別の子供が前からやって来た。

進行を妨げる。

そのインドの子供は
「ヘイ!ポストカード20ルピーでどう?僕の店はあっちだよ!来なよ!」

同じ手法に僕はさすがにふいてしまった。

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