「この運転手はインド人なのにクラクション鳴らさないなぁ。」
タクシーの後ろの席に座りながら不思議に思っていた。

プーー!

あ。鳴らした。

運転手の右手をよーく見ると右手の親指の腹の根元。「ふかふかな所」で鳴らしている。

鳴りやまないクラクションの撃ち合いがインドの喧騒と混沌、雑多さを引き立たせている。

ホテルをタクシーで出たわたしはバラナシ空港に向かう。
タクシー代は600ルピー。チップは必要ないと言われている。

「本当にしっかり送ってくれる?」
「大丈夫だ。」
「彼は道を知っている?」「大丈夫大丈夫(笑)」

ホテルのオーナー、
ティーティンはどこまでも疑ってかかる日本人に笑って答える。

そろそろお別れの時間だ。パパやオーナー、フロント君にお別れを告げなくてはいけない。

ホテルの分厚い宿泊者名簿のチェックアウト欄に「森田賢二」を記入する。

するとその下の欄に前日からここのホテルに泊まっている日本人女性の名前があった。
女性1人でここに来てるのだろう。

「イズディスジャパニーズ?」

オーナーはそうだという。
ここインドで日本人が同じホテルに泊まっている偶然にわたしはまるで親戚と会ったかのような懐かしい親近感を覚え、
今までどのようなルートでここに来たか、
どのような出来事があったか吐露したい気持ちになった。

「みんなガイドブックを見てここに来ているんだなぁ。」

会えなかったのは残念。
わたしはフロントでお金の精算をする。
ホテルの延泊代。
ジュース代。
列車チケット代。
チケット代行手数料。
タクシー代。

全てクリアーになり、
ティーティンと握手をして別れを告げる。
ティーティンは「もしまたここに来るような事があったら訪ねてくれ。いつでも味方をする。」
という旨を英語でいうとヒンドゥー語で何か唱えた後合掌した。
わたしは心の芯から込み上げてくる感謝と
どうにもならない別れの悲しさに
気持ちが整わないまま合掌する。

別れは人を大きくすると聞いたことがある。

わたしは嗚咽する寸前のものを我慢すると
「この人との別れがこんなにも悲しい事だったんだ」と別れ際に気付く。

わたしはこのオーナーやパパとの別れがわたしを大きくさせたかは分からないけど
わたしはわたしを保ってられないぐらい悲しかった。

そしてわたしはタクシーの運転手を紹介されて、乗り込み、
バラナシのハリスチャンドラガートを後にした。

この旅は今後2日間どんな事があっても「来てよかった」と思えるだろう。

わたしは「空港まで何分ぐらい掛かる?」とタクシーの運転手に尋ねる。そして何度か英語のやり取りをした後「1時間。」 という答えを頂いた。

わたしは今後わたしの言いたい事や相手の言いたい事が英語でお互い伝わるまで
文章を変えて、発音、単語を変えて、僕と相手が分かるまで「ソーリー?」を繰り返すだろう。

お互いの心を繋げる努力を惜しまないだろう。

なかなか前に進まない牛のお尻「牛渋滞」を抜けバラナシ郊外の本当のスラムを横目にタクシーはまるでタイムスリップするかのような速度でバラナシ空港へ向かう。

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