休みのヨガスクールからホテルに帰ると「部屋を掃除した者がTシャツを持っていった」とパパに告げられた。

わたしはその人がいつ返しにくるのか尋ねた。

「今日はもう帰ってしまったから明日。」

「明日?そいつの家はここから近いのか?」

「近い。」

「明日私はここを出なくてはいけない。」

「わかった。」

「9時までには来るか?」
「来る。」

「わかった。」

わたしの泊まっている部屋の階下を掃除した『者』は何で誰にもティシャツの事を告げず家に持って帰ったのだろう。

いずれにしろホテルにいるうちはホテルの人とうまくやらなければならない。

今回の件はわたしが「返ってくる」という事だけで腑に落ちなくてはいけない。

わたしは「明日、早朝ガンジス川をボートしたい。」
とパパに告げる。

「わかった。朝5時にここ、フロントに来い。」

「わかった。何ルピーだ?」
「50だ。」

「わかった。」

「あと明日ヨガを体験したいんだけどどうしたらいい?」

「ヨガの先生が8時にホテルにやって来る。呼ぶか?」

「幾らだ?」

「500ルピーだ。」
ホテル1泊分の金額だ。

「うーん、高いな、ちょっと考えさせてくれ。
鉄道チケットを予約したいんだけど、オーナーはいるか?」

「今呼ぶ。」

ヨガは一回1000円。
その頃インドの金銭感覚になっているわたしにはこれは手に届かない値段だった。

ホテルのフロントの内線を使うと近所にいたのかオーナーはすぐに来た。

そして「事務所でやろう。」と僕を呼び込む。

これがもし『インド1日目』で『心が通じてない奴』だったらノーと言っていただろう。

首から掛けたタオルでおでこの汗を拭き事務椅子に座ると「暑いね。」とオーナーは切り出した。

わたしは「ャァ。」と同意する。

さっき僕が買ったサリーを一般のインド人は幾らと判断するのだろう。

気になって値段を予想してもらう事にした。

「ちょっと聞きたいんだが、さっきわたしはこのサリーを買ってきた。幾らだと思う?」

オーナーはサリーに全く興味ないのかよく分からないといった表情をする。
「300ルピー?」

なるほど。
わたしは相場で買ったのかもしれない。

オーナーはちょっと微笑むと、
全く関心がないのか本題に入る気配をだす。

わたしがなぜこのような質問をするのか意図が分からないのだろう。

お互い瓶ジュースを飲みながら今後のプランについて話し合う。

わたしは昨日から考えてたここバラナシからアーグラまでどのように行くかプランを提案した。

出来るかどうかは列車の空き状況次第だ。

「明日なんだが、わたしはバラナシからニューデリーまで一回戻り、
その日の夜に列車でアーグラに着くようにしたい。大丈夫か?」

「リシュケーシュは?」

「諦める。」
わたしはリシュケーシュというヨガ発祥の地に行くことを諦めた。
「本当に俺は行きたいと思っているのか?」と自分に問いただしてみた結果だ。
ヨガを体験したかったらここでも出来るというし、
最終日にニューデリーでも出来る。

リシュケーシュは当初プランにはなかった。
わたしは『迷ったら原点に帰る。』事にした。

相変わらず薄暗い部屋に
わたしとオーナーだけだ。

事務所の扉は開いていて外が見える。

ここハリスチャンドラガートには火葬場がある。

インド全土から死体が運ばれて来ては焼かれる場所だ。
今僕がオーナーと旅行の計画を立ててるすぐ外が賑わしい。
リズムに合わせて叫んでいる。
またどこからか死体が運ばれてきた。

ずっとこの場所にいるからだろう、
オーナーは全く葬儀に目をくれず「どうやってここからニューデリーまで行く?」かわたしに尋ねた。

わたしはニューデリーからここまで列車で15時間掛けて来た。
また寝台で戻ったら時間が掛かる。
わたしは今度いつ来るか分からないインドで『時間』を取るか『お金』を取るかの判断を迫られた。

電車なら15時間。
安い。ただ明日は移動で1日潰れる。

飛行機なら1時間半。
高くつく。ニューデリーで乗り換えて即日アーグラを回れる。

わたしは外で故人の名前が何度もリズムよく叫ばれている中「国内線の飛行機だ。」と要求した。

インドに来て一番の買い物をした。

オーナーは
「オーケー、アイチェック」と短い英語で一人言の様に呟くと
飛行機で行った場合の便と値段を調べてくれた。

暫くして「あった。キングフィッシャー社6600ルピーだ。」と告げる。

昨日も国内線を調べてくれたがその時は4000ルピー弱だった。
昨日のエアインディア社の国内線は埋まってしまったらしい。
キングフィッシャー社の便は『午後便』で1万4000円。
昨日飛行機に決めていれば安く、時間もタイトにできた。
リシュケーシュに行くか否か、インドの国内線を使うか否かが僕の一歩目を遅らせた。
躊躇した事で条件は悪くなり費用は4000円近く掛かり、
尚且つ時間は「間延び」の結果になった。

わたしは仮に国内線で行ったとして、
ニューデリーからアーグラに行く列車は何時発か気になった。
オーナーは僕より先に気になっていたらしくもう既に調べ始めてた。
「ニューデリー17時発だ。それなら空いている。」

つまりアーグラには21時に着く。
飛行機で行ったとしても明日は1日移動で潰れる。

13時にニューデリーに着き17時までの4時間をそこで過ごさなければならない。
僕は「列車は予約できるか?」と尋ねた。

そして投げた後、
ガイドブックに目を落とし次に拝める世界遺産タージ・マハルの歴史を読み返しどのような見学ルールなのかも確認していた。

そして確認していて僕は思わず「あ。」と発してしまった。
『タージ・マハルは金曜日は休み。』

その事実を知らないオーナーは画面に穴が空くような眼でサイトが移動するのをカチカチやりながら待っている。

わたしは「いわなきゃ」と思いながらタイミングを見計らい頭を整理する。
逆算してみる。

もし明日夜に着いたとしても閉館してる。
次の日タージ・マハルは休館で入れない。
明後日は帰国日。
20時ガンジー国際空港だ。18時までに空港チェックインを済ませるなら
17時までにニューデリーに着かなくてはならない。

インドの列車は平気で遅れる。
聞くと「明後日の列車は10時アーグラ発ニューデリー14時着しかないという。」
という事は10時のアーグラ駅列車に乗らなくてはならないという。
タージ・マハルは朝6時から開館しているらしい。

10時アーグラ発だとしたら9時までの3時間しか回れない。

タージ・マハルにいられる時間はたった3時間。

わたしはこの事実を渋々納得しなくてはならない。

オーナーにタージ・マハルが休みという事を告げると「タージ・マハルの中には入れないが庭園には入れる。みんな写真を撮っている。」という。

いずれにしろこの旅程でゆくしかない。
オーナーに全てのチケット予約を頼んだ。
暫くしてオーナーが叫ぶ。「シット!」

わたしは映画でしか聞いたことのない言葉に不穏を感じ「どうした?」と尋ねる。

「ここのパソコンは速度が遅い。この近くにネットカフェがある。そこで予約する。一緒に来てくれないか?」
なかなか怪しい発言だ。
この国はとにかく外国人をついてこさせる。

わたしは今までの「経緯」に信頼をして「イャァ」と同意すると立ち上がった。

飛行機、列車のチケット予約を近くのネットカフェでする。

日本の旅行会社に航空券の予約を直接頼みに行き、
暫くして担当が「うちの会社はネットが速度が遅い。ちょっとそこのマン喫まで来てくれないか?」と言われたらわたしは「じゃぁちょっと出掛けるのでやっといてくれないか?」となるだろう。

インドでもわたしはそのように答えたが通じなかった。
「こい。」という。
『来させる国、インド』だ。
凸凹の道。
牛の集団。
薪割り少年。
日差し。
寝ている奴。
死体から上がってくる微かな煙。

オーナーは汚い、屋台とも言えない『リアカー引き』の前に立ち止まると
「ちょっと待ってくれ。腹が減った。」といい、
何かそいつに頼んでいた。
そいつはなんか米粒みたいなものを汚いところであぶり粉をまぶしたり何かを混ぜたり手慣れた感じで表情変えずやる。

14歳ぐらいで若い。
誰がこんなの買うんだよ!と今まで道を通る度突っ込んでいた物をオーナーは買った。

10ルピー札を出してお釣りをもらっていた。
わたしはインドに来て10ルピー以下の物を買った事もない。
「お腹がすいた、」と辛そうな顔をしたオーナーはこの変なヤツで腹ごしらえするつもりだ。

新聞の切れ端、よく小学生の尿検査時に紙切れで折って作った紙コップみたいのに目の前の無表情が米粒500粒くらい入れると

そうそうこれが食べたかったんだよみたいに受け取る。
わたしは「そうそうこれこれ。」と一旦米粒を投げ込む振りをしてこんな汚いもの喰えるか!とやるもんだと思っていた。
そしたらどうだろう。
オーナーは一向に米粒を掴んでは口に入れる。
食べながら前を歩き始めた。
あ、成る程、ある程度食べてから「こんなもん喰えるか!ボケ!」だ。
わたしはいつその声が聞こえるのか待っていた。

牛と牛の間をすり抜け、
軽いスラムみたいな通りをすり抜けオーナーは「ベビースターみたいな食い方」をしながら進む。

すると前をいくオーナーが歩を休め、
わたしの方を振り向き
「食べるか?」と聞いてきた。

わたしは折角の好意を無駄にしたくない気持ちとチャレンジという意味で手を差し出した。
日本人には『にんじん』と言ったら分かるかもしれない。
駄菓子屋で売ってる赤い人参の包装に入っている揚げスナックだ。
オーナーはこちらがそんなにいらないよ!と思うぐらい手の上にそれをのせる。わたしは恐る恐る一粒口に入れる。
スパイシーな奴だ。
不味くはないが食べないでも平気だ。
わたしはあまりちょびちょび食べていると相手に不快に思われる事を懸念して次はひとつまみチャレンジする。
わたしは美味しくはないが不味くもないそれを不気味に感じ手にあるそれをオーナーが前を行く後ろをうかがえないうちに道に捨てた。

こーゆー貰いものが一番怖い。
そこまではこの国の『食』を信じていない。
おもむろに振り向いたオーナーは僕の手に『人参』が無くなっていることに気付いた。
すると「美味しいか?」と感想を求めてきた。
わたしは最高の演技で「美味しい美味しい!」と感動してみせる。

するとオーナーは嬉しかったのかまたわたしの手に『人参』を乗せてきた。

「うわー!センキュー!」顔ではセンキューだが、
内では「こいつ何してくれてんだよ!ふざけんな!喰えるか!」だ。

この『人参』の量。
まずい!
今捨てたら鳩が寄ってくるぞ!
この道を行く両サイドのインド人全員が「こいついいのもってるじゃねーか」と監視してる。

ほしいならやるよ!
今道路に捨てたらこいつらに「おい!捨ててるぞ!」とチクられる。
そして多分「お前落としたぞ!ほら!気を付けろよ!」
といって落としたたそれがまた手の内に汚くなって戻ってくるだけだ。
あーどうしよ。

その次のわたしの行動を見ていたインド人の目には「あの日本人相当お腹が空いていたんだな、」と映っただろう。

わたしは口の端に付いちゃうぐらい意を決してガツガツ全部平らげた。
それを笑いながら見ていたオーナーは「そんな旨かったのか!」と勘違いしてわたしの手にまた『地獄』を乗っけた。
「ノーノーノ!」
オーナーのが無くなっちゃうじゃないか!という旨を伝えるとオーナーはわたしの気遣いに感謝しながらネットカフェに入っていった。
まさか「捨てたら鳩が寄ってくるぐらい」くれるとは思わなかった。
それが原因かその夜のイーバカフェが原因かは分からない。
わたしは朝まで寝てはトイレを繰り返し下痢に苦しむことになる。
多分全部当たったのだろう。なぜなら僕は肛門でこれは「何の分」「これはマンゴーの分」「あ、これはまだイーバカフェの分だな。」とかが本当に分かった。
「これはクリリンの分!」
わたしは怒った時の孫悟空みたいな事を朝までやっていた。

※インドの歯磨き粉は辛い。キャップをしないで放置していたら翌日蟻が集ってた。

インドの歯磨きセット

インドの歯磨きセット

※インドの一番大丈夫そうなマンゴー。20ルピー。40円。

マンゴー

マンゴー


※必ず飲むことになるミネラルウォーター。真ん中の水色ラベルのが一番飲みやすかった。

黄色のラベルの奴のように日本から「ポカリの粉」を持っていって対応していた。

ミネラルウォーター

ミネラルウォーター

※インドの歯磨き粉。「FAITER」インド人にとって歯磨きをすることは「戦い」なのだろう。

FIGHTER

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